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フィンランドで開業している私達のビジネス、ライフ・スタイル ブログです。 This is about our business and life in Pori, Finland.


by wa-connection

フィンランド原子力事情 フェンノヴォイマ社続行へGoサイン

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春にフィンランドの電力会社二社が原発新規建設について得たそれぞれの原則決定に対し内容変更許可と期限延長を申し出ていました。

資料は雇用経済省に提出され、6月以降発足した首相交代後の改造内閣にて決定される予定でした。
そして9月半ばの今週16日(月)、雇用経済相であるJan Vapaavuori(ヤン・ヴァパーヴオリ)が爆弾発言。
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北部ピュハヨキに予定されているFennovoima社の原発には内容変更を認める方向で政府に提案する、そしてもう一か所、既存原発であるオルキルオト原発を運営するTVO社が出した建設許可申請の期限延長依頼(3号機が遅れに遅れていて同時期に2基もの原発建設をする資金確保が難しいため4号機建設を遅らせたいという主旨)を却下する方針とのこと。
ただし、前者の内容変更許可に関しては来年夏までにフィンランド国内所有率を60%に引き上げる、という条件付きです。

Fennovoima社はこれまで(以前の記事リンク)も書いてきたように、最初は東芝とArevaの二社で最終交渉に入ったのち、Arevaが脱落。東芝が優先交渉権を得ましたが、その後最大であったドイツ系E-Onが出資者から退きました。(ここは例えばスウェーデンの原発もFortumと共同で所有していますが)理由は福島事故後、原子力を取り巻く状況が不安定なため。
ドイツは実際持続可能なエネルギー供給に政策の舵を切っています。
その後小規模の出資者がぼろぼろと脱落。春にはフィンランドの二大小売り業大手であるKeskoグループも「やっぱやーめた」と発表しました。
Fennovoima側は、「出資してくれるって約束したじゃん!約束は約束だかんね」とあわてていました。
(注:9月の記事によると、Keskoは結局法的に今更出資取りやめはできないようです。)

そして出資者を求める話がなかなかうまくいかなかったからか、9月9日に上層部をほぼ刷新。
以下Fennovoima社のニュースリリース(英語)。
 

結果的には、去年からFennovoimaオーナーであるSF社上層部が全国各地を“お願い”行脚した結果、各地自治体系電力会社なども含め9月前になんとか51%強がフィンランドのオーナーで占められているというギリギリの状況でした。そしてこの1年以上微妙な不安感をもたらしてきているのが、東芝が提案していた1600MW(160万キロワット)級の大型原子炉よりより小さく、(つまりはそこまでお金がかからない)中型炉を提案するロシア国営企業のロスアトム社が原子炉メーカーとして浮上、製造するだけでなく、Fennovoimaに出資しましょう、と窮地に付け込む形でどんどん存在感を増していました。現在、正確にはFennovoimaの所有企業はフィンランドの電力株式会社であるSFが66%、露Rosatomの子会社であるRAOS社の株保有率は現在34%。政府の今日の決定では前述のように来年夏までの猶予期間中にフィンランド国内の企業などの保有率が最低6割にあげること、というものです。9月15日にヴァンターの電力会社が株所有率を1%弱増やすという連絡をし、現在SFは54%がフィンランド国内のオーナーで占められていると16日に雇用経済省にいそいそと報告。内容変更というのは、2010年(福島原発事故の前に国会で議決)の原則決定から、内容が変わって原子炉のタイプも変わって所有者も比率も変わってきてるけど、僕らこのまま続行していいよね?ということですね。

ちなみに、Rosatomの子会社であるRAOSには、世界中に有名な(この業界では、ですけど)フィンランドの原子力規制庁にあたるSTUKの元所長、ユッカ・ラークソネン氏が2012年から転身しております。STUK所長もこの3年ぐらいで3人変わっていますからね。ラークソネン氏の後任は非常に辣腕で言葉のキレもいい所長でしたがやはりそこを買われてかIAEAにスカウトされていきましたし、現在の代理として所長を務めているのは40代前半の若手エンジニアです。2月に日本に行って記者クラブでも講演してましたね、大雪の頃でしたっけ。

対するTVO社は、先日出たArevaの予測で建設中の三号機の商業運用開始を2018年としたことで、5年間と言っていた延長期間を3年半と訂正していました。
彼らの言い分は、
しょうがないじゃん、プロトタイプ、世界初でもっとも安全ってフランス人が調子いいこと言ってさ、ぼくら人が良いからそれ鵜呑みにしちゃったんだよね。そしたら時間管理もプロジェクト管理もなっちゃいないったら。パイプ注文しといて工期的にもう設置しないといけないのに部品足りないからダミーで間を埋め合わせして後で届いてからダミーを取り外してほんとの部品また交換するとかいう効率悪すぎな奴らなんだもん、しかも現場作業員用の仮設トイレすら設置するの忘れてたんだぜ?同情してほしいし、3千億円級のプロジェクト同時進行できないし、延長しなきゃしょうがないよね?いいよね?ぼくらArevaと喧嘩中(費用負担に関し国際裁判で係争中)でお金も最後はどっちが負担するかわかんないんだよね、最初32億ユーロっていってたけど、倍以上かかりそうなんだ。数字大きすぎてもう僕いやんなっちゃうけど、次のも作らないとだし・・・。でもこっちは将来の原発のトイレ(オンカロ)はちゃんと地下400メートルのとこに作りつつあるんだよ。すごいでしょ?でもフェンノヴォイマのやつらにはトイレ使わせないもんね。

ということですかね・・・

TVOの3号機の建設プロジェクトに関しては、大臣は「フィンランド産業市場最悪の体たらく」となんとも冷たい切り捨て方で延長は認められない、というのが雇用経済省の見解となり、このままでは4号機のプロジェクトは実現が困難との見込みです
実はハード側は9割出来上がってはいて、送電線にも接続されていますが、原発運用の心臓部であるオートメーションがまだドイツでテスト段階。テストが無事終了後、フィンランドでインストール、さらに試験運用することになっています。

周囲でも、Fennovoimaは危なそうだけど、TVOは延長認められるんじゃないかと考えている人が多かったように思います。
TVO側もそうだったでしょう。ですから16日の雇用経済省の発表はエネルギー産業界全体でそれこそ青天の霹靂でした。

Pori市、Rauma市の市長、原発の町Eurajokiの町長も相次いで遺憾の意を表明。
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そして一方でウクライナ情勢に対して、EU議会の次の動き(提案であり、強制ではありませんが)が今日くだされました。対露のエネルギー・プロジェクトを凍結させる、というものです。これまで農産物だとか、結局影響の少ないものから始めてきたわけですがガスの「ガ」の字も出てこなかった訳ですよ。

以前も大寒波のときにウクライナ行きのガスパイプを止めて、暖房が使えず高齢者が多く凍死したこともあったと記憶していますが、ヨーロッパもガスは止められたくなかった模様。

停戦中でもいつ情勢が変化するか分かったものじゃありませんし、ここにきてやはり効き目があるのはエネルギー、という風に厳しい風潮になりつつあるようです。その数日前のフィンランドの雇用経済省の見解は、EU議会でも注目を浴び、ロシア資本の企業との協力は望ましくないという声も聞かれました。

そして3月の左翼連合が連立与党から離脱して半年、待ってましたよ!予測通りでしたよ!
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緑の党が、18日木曜の閣議決定でFennvoimaに好意的な決定を下すのであれば野に下ると。
そんなのどっちかにGoサインが出るの、おそらく腹の中では皆分かってたことじゃん・・・
きっと宣伝のプロと今週初めからミーティングして記者会見のスピーチ内容と搭乗の仕方リハーサルしてたことでしょう。
16時の記者会見にはちょっと遅れて緑のヘルメットと緑の自転車Jopoで登場。
ガチですなぁ。
そして、ニーニスト大統領の甥っ子である緑の党代表Ville Niinistö(38歳バツイチ奥さんはスウェーデン緑の党の元代表)氏は晴れて野党に返り咲き、半年後の総選挙に着々と備えております。
なんせ前回の総選挙は、連立与党のひとつとしてGoサインを二つの原発に出したことでかなりの支持者を失いましたからね。当時の党代表はAnni Sinnemäkiでしたが。色々言い訳してましたからねー。
というわけで、政界も揺れております。
カタイネン首相誕生時には6つの虹色の政党だったのが、半年前に左翼連合が抜け、そして今緑の党が抜けて4つの政党から成る内閣となりました。国会ではぎりぎり過半数を維持しています。(議席差2ですよ!)
ということは、重要な評決を取るときに、おちおち関係政党は外遊なんてしていられないわけですよね。
数が足りないんですから。来年までこの内閣がもつかどうか、も多少不透明になってきました。
どうする、アレックス?トライアスロンやってる場合じゃないんじゃないかと。多分彼は最近長めのジョギングすら行く暇がないはずで、スポーツ・オタクとしてはかなりストレス溜まってると思います
よ。

話がそれました。
そして本日9月18日午後閣議決定で、雇用経済省の提案通りになりました。連立与党内でも政党内で賛成、反対派分かれていましたが首相の政党国民連合党では大臣がすべてFennovoimaに対し賛成に投票。SDPでは分裂していました。(フィンランド政府のサイトから。英語版)

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つい先ほど22時ごろのニュースでは、ヴァパーヴオリ大臣はTVOにもちょっとだけ可能性はある、と言っています。
ただ、TVOがこちらが求めている情報をすぐ提供してくれればいいが、この半年そういう連絡はなかった、とコメントしています。(フィンランド語版ニュースリンク)


なんだか、両方とものプロジェクトをとん挫させたいんじゃないかという気すらしますね。
産業が衰退しサービス業依存が進むこと、大規模工場が閉鎖されたり景気の悪化でコストの安い国に移転すること、これはこれまで継続してきた傾向ですが、ウクライナ情勢で、もしRosatomが関わるFennovoimaのプロジェクトをとん挫させたらロシアが対ロ経済制裁と受け取り、最悪の場合輸出入の損害だけでなく関係が急激に悪化してしまうことを恐れ、そのため許可だけは出しておいて条件が満たされなかったから後で却下という路線を狙っているのかどうか・・・裏でいろんな取引が行われているようにも思えます。

ちなみにFennovoimaはいまだに使用済み核燃料の最終処分に関して動いていませんが、今回のこのTVOの4号機の計画がだめになるとすると、ONKALOには4号機のスペースが確保されている訳で、将来的に新しいFennovoimaの原発の廃棄物もONKALOに、という可能性も無きにしも非ず、ですね。

以上がここ一週間ほどの原子力事情の動きでした。



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by wa-connection | 2014-09-19 06:10 | finnish news