フィンランドで開業している私達のビジネス、ライフ・スタイル ブログです。 This is about our business and life in Pori, Finland.


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ラーシュ・ケプレル2冊読了 「ヨーナ・リンナ」シリーズ

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(※ケプレルのヨーナ・リンナ5作目(未邦訳)『ストーカー』表紙を使った書店マーケティング2015年春アカテーミネン書店から)
※ネタバレはありませんが、裏表紙に書いてある程度のあらすじは書きます。

ここ10年ほどはスウェーデンを中心とする北欧ミステリが一定の人気を確立し、大手から小さな出版社までコンスタントに邦訳もされる分野となりました。
英語ではScandi Crime(北欧犯罪小説)とかNordic Noirと言われることも多いようですね。

面白いのは、フィンランドの書店でもカテゴリーとしてミステリは純文学に入っていること。
ん?括りが大きすぎやしませんか?
とも思うのですが、
大きく分けると、
新聞・雑誌、
児童文学、
ノン・フィクション、
文学(ここにフィクションとしてミステリも入る)

こんな感じでしょうか。
もちろんノンフィクションでも、趣味関連、アート、建築、自然・・と分かれますし、文学コーナーでは純文学、詩、そしてミステリ(フィンランド語ではdekkariとかjännäri)といった風に枝分かれしていきます。

児童文学でも、絵本、字が読めるようになった低学年向け、高学年~10代を中心としたYA小説(恋愛もの=tykkääminen)、ファンタジーと細かくあります。

12月はソフィ・オクサネンの新作ツアー講演会が最終場所ポリであったので、サイン本を貰うために夫が買って自分でサインを貰った後夫にクリスマスプレゼントにしてもらうという本末転倒な?やり方をして、途中まで読んだ本をクリスマスまでお預けになってしまったのですが、めげませんよ私は! ↑これについてはまたいずれ。


ということで、今積読になっている女性の投資本をまだほったらかして、愛するポリ市立図書館にいそいそと。
本題に戻ります、ラーシュ・ケプレルの4作目と5作目です。

12月は寝る前や仕事の時間を惜しんでスウェーデン・ミステリ2冊を読んでいました。 
翌朝仕事だというのに1時頃まで読んでしまったり。子どものころから読書で止められなくて(オーソン・ウェルズの広告だったあれ、思い出すな)夜更かしし翌日が辛いというのはわかっていてもやめられない。
三つ子の魂、でございます。またはいつまでたっても学習しないとも言えます、はい。

ラーシュ・ケプレルの「ヨーナ・リンナ」シリーズは日本でもシリーズ3作まで早川書房から
邦訳がされていて『催眠』『契約』『交霊』と出ています。まだの方ぜひどうぞ。
ぐいぐいスピード感ある展開で読ませます。わき道エピソードは放置されることも多いので(これが犯人か!と思わせる伏線でしょうが、私も何度も引っかかりました・・・)
スウェーデンが舞台ですが、移民が多く、隣国フィンランドから1960年代前後に移住した人口も多い社会の背景を反映して、主人公ともいえるヨーナ・リンナ刑事はフィンランド人であるところもフィンランドのファンの心をくすぐるところで、こちらでも非常に根強い人気があるシリーズです。

日本ではシリーズものの場合、まず一番人気の作品を訳してみて先行きを判断するというところがあるでしょうし、シリーズものはやはり先細りするという事情もあるのか、4作目の『サンドマン(未)』と5作目の『ストーカー(未)』は邦訳されていないようです。

実は私は三作目『交霊』ですこーしだけ訳のお手伝いもさせていただきました。あとがきで名前を書いていただいてる事に気づいた・・・
ヨーナ・リンナが時々作中でフィンランド語のセリフをつぶやくのでスウェーデン語だけでは訳者さんも困ることでしょう。これがね、、フィンランドの小説でもスウェーデン語系の人物が出てくると独り言とか子ども時代の童謡だとか出てくるんですよね。学校で習って基礎は覚えている人が多いのでフィンランド人も読むには困らないでしょうが私のような基礎がゼロの者にとっては結構辛いものがあります(笑)それで秋に長男と一緒に始めようとやってみたものの案の定忙しくて途中で脱落・・・超基礎で止まってます。

さて、作者ラーシュ・ケプレルは処女作ではペンネーム以外秘密というセンセーショナルなデビューで非常にうまいやり方だなと思ったのですが、のちに新聞社が素性を突き止め、(彼らの自宅に暗い中懐中電灯で侵入し奥さんが怖がって旦那さんがチャイムでドアをあけたところ、アフトンブラーデット紙記者2名が彼らの著作と懐中電灯を掲げ「もうわかってるんですよ、白状してください!」と詰め寄ったとか。
二人とも文学界で活躍する作家ですが、お互いの文学活動を邪魔しないよう共同執筆の時はこの筆名にしたりと言った事があったようです。

邦訳もでている3作は私も日本語で読んだのですが、今回やっと手を付けたのはフィンランド語版の4作目と5作目でした。だって日本語待てど暮らせどでないんだもん!

訳者は1,2作目はヘレンハルメ美穂さん、3作目はミレニアムでもヘレンハルメさんと共訳した岩澤雅利さんと新作『ミレニアム4』でヘレンハルメさんと共訳している羽根由(ゆかり)さん。Twitterなどレビュー感想を見ると、ヘレンハルメさんを言及される方が多いですが(知名度と作品数では確かに!)岩澤さんと羽根さんともにこれからもどんどん作品が増えていく盤石な実力を備えた方々だと思いますので今後を楽しみにしています。
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『サンドマン』はヨーナの隠された秘密がいよいよ明らかになり、宿命の敵ともいえる相手との対決のストーリーとなります。このためにずっと孤独に耐えてきたヨーナ。可哀想すぎる・・・
一応、もし邦訳がでる場合を考えてこれ以上は書けませんが…。
登場人物の一人である、ベストセラー作家で被害者のところに日本から編集者がアニメ化の版権の事で訪ねてくる場面があったりしてちらっと笑わせてもらいました。
人気作家は執筆中だろうがツアーとか書籍見本市での講演だとか年間通じてコラムや記事も依頼されたり海外版権のやり取りをしたり大変ですよね。エージェントが全部決定できるわけじゃないですしね。翻訳者からも問い合わせがあるケースも多いですし。

おなじみ登場人物サーガ・バウエル(スウェーデンの有名な画家、ヨン・バウエルの子孫でもあり彼が描く妖精そのものの金髪ではかなげな美貌。それと裏腹にボクシングや格闘技で強い矛盾性が魅力の登場人物で結構重要な役どころ)らも健在です。
終わりが続編を予感させる唐突な終わり方で、2013年の作品だったので、続編5作目もフィンランド語版が2015年春に出ていて助かりました。
図書館さまさまです。
『サンドマン』は移動図書館から見つけて、『ストーカー』はポリ市立図書館支部から見つけました。
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『ストーカー』
こちらでも先に出るのはハードカバーなので、翌年にペーパーバックが出ます。
ちなみに、普通は既にハードカバー版があるなら同じものを使いますが、フィンランド語版は
来年同じ出版社から、違う訳者で再度ペーパーバックが出るようです。
なぜだ!?気になる!確かに初版だから、外国人の私が読んでも気づく綴りミスなどは何か所もありましたが、ストーリーの流れ自体の訳は悪くないと思ったのですが、、こればかりは原作を読める実力が無いと比較はできません。または英語版と比べるとか。
ただ、フィンランドではスウェーデン語からの翻訳者はわんさかいるので、一作目から全て違う人がフィンランド語版をやっているという理由はあるかも。版元が付き合いのある”空いている人”が依頼を受けるとか。

実物は、600ページ以上でハードカバーなので、凶器になる重さ。これが眠くなって顔の上に落ちたら怪我します。
寝っ転がって読むには重い・・・というわけでソファに座って&うつ伏せでなんとか一週間で読み切りました。
連続夜更かしでクマが、うう。

内容はなんと一作目の「催眠」で出てきたエリック・マリア・バルクが重要な役どころで再登場ですよ!
点から始まったストーリーが、点と点をつなぎ合わせて弧を描いて、円が閉じていく形を作っていくような印象を受けます。
そしてヨーナがまだ登場するわけですが(待ってました!)、最初のころのような茶目っ気は4,5作ではもう失われていて「僕の言った通りでしょ」というセリフはゼロ。
これは悲しいですね。ハリーポッターでもストーリーが進むにつれて暗~くなってくのが悲しかったけど(いや比べるところか?)。
そしてこれも終わりが・・・続編があるようなないような。

さて、作者アンドリル夫妻の講演を生で聞きたかったのですが、春、ストックマンでのチャンスは逃しました、でもその後ネットテレビで生放送があったので中継を見たのですが、とても面白いコメントをいくつか言っていました。
そのうちの一つは、「ミステリーのほうが純文学より難しい。なぜか?必ず答えを読者に提供しなくてはならないから。純文学はどんな終わり方をしようと、ストーリーが宙ぶらりんで終わろうと構わないという点で簡単だと思う」これは「なるほどね」と膝を打つコメントで、印象深かったです。
それまで私は純文学の方が高尚なもののように感じていましたが、ストーリーを書くにあたって難しさという意味では探偵ものやミステリの方がつじつまを合わせる点で一貫性も求められるわけですね。

北欧ノワール、現代ものはなんにしても殺人の方法もえげつないです、はい。

1960年代のフィンランド・ミステリを読んだ時(『そして誰もいなくなった』に似ているという評判の)“死因がナイフで背中を一突き”というなんとも今からすると牧歌的ですね、とミステリのハードコアファンの方からのコメントを頂きましたが、まさにその通り。今頃の皮をはいで逆さづりだとか、内臓全部えぐり出すとか燃やしちゃうとか、血液抜いちゃうとか、殺人に残虐な手口を使わなくてはならないというのは、そうでないと読者の関心を惹けない、トリックやストーリーでの作家の実力・想像力が乏しいからではないかとこれは別のスウェーデンミステリ作家が言った言葉なのですが、同業者からの批判もこういったところに出てきています。
(彼の作品ではどういう殺し方をしているか、読んでないので分からないのですが。(笑))

ともあれ、ヨーナ・リンナのファンとしては途中ドラッグ中毒だの売春婦だののミステリにつきもののくだりはもう色んな作家のシーンで出てくるので食傷気味ではありますが、なんとかへまをしでかしたりするお約束登場人物や心理描写の妙で最後まで途切れず読み進めてしまいました。
(ストーリーでつかみどころがないと、読み始めてもやめてしまうもので)


確か次回作はまだ出ていないというか、ケプレル最新作“Playground(プレイグラウンド、とするか「遊び場」とするか迷う所)”はフィンランド語版が来年2月に出ますが、予告を読むと全く違うストーリーで死後の世界も扱うテーマらしいので、ヨーナの物語は取りあえず一休みなのかもしれません。スウェーデン語版読んだ人教えてください!

ヨーナの続きが読みたい・・・ただアンドリル夫妻は、『催眠』(Lasse Hallström監督は有名ですよね)の映画化で大失敗したという苦い経験を持っているので、『契約』の映画製作にもストップをかけたよう。「催眠の方も、脚本がダメすぎた」と一刀両断です。もう任せてられないという事で、近い将来始まる予定の一作ずつを1クールのドラマにしあげる方では脚本にもがっちりかかわる予定だそう。彼ら執筆の時間無さそうだなぁ、、5作分5クールやるとなると。

しばらく「待ち人来たらず」の心持ちとなりそうです。
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by wa-connection | 2015-12-26 05:44 | books