フィンランドで開業している私達のビジネス、ライフ・スタイル ブログです。 This is about our business and life in Pori, Finland.


by wa-connection

YA『ランボー』(Otava社、ナドヤ・スマネン作)

d0093885_17341339.jpg
久しぶりに縁あってYAの作品を読みました。
YAというのは、ヤングアダルト、主に10代思春期向けの文学を指します。

作者はNadja Sumanen(ナドヤ・スマネン、女性)の“Rambo”(ランボー)。
これ、主人公の男子の名前。シルベスタ・スタローンの映画を見て息子にこの名を・・・
いわゆるDQNというか、何て名前を子どもにつけるんだ、と思いましたよ、可哀想に。
もし私が本人だったら名前だけでもグレそう。(死語)

最近のフィンランド児童文学もそうですけど、普通の家庭設定と言うのがどんどん減ってる気がします。
世相を反映しているのか、父親、母親がいて子供がいて、、と言うのではなくユニークというか。
子どもが共感しやすいという事を考えているのもあるかもしれません。
作中にも引用されている絵本シリーズ「リスト・ラッパーヤ」と言う男の子も母親父親がどこか遠いところで働いていて叔母さんと暮らしていますしね。他の作品でも両親が離婚、シングルファーザー、シングルマザー家庭、再々婚、ステップブラザー、シスターと言った設定がじゃんじゃん出てきます。あとレズビアンカップル、ゲイカップルの家に養子、と言うのもあった気がする。ま、日本でも『キッチン』もカテゴリ的には同じですね。どっちがいい、悪いの話じゃありませんので悪しからず。

この作品では、中学2年のランボーは、母親と二人暮らし。
母は鬱でずっと寝込んでばかりで定職についていない。
母の恋人は一年単位で変わる。
そして冷蔵庫に食べ物が入っていた試しがないので、夏休みになると毎日温かいご飯が食べられるのかがすごく心配。
父親は認知もせずに彼が生まれる前に失踪。
ランボーはADHDと診断され、小さいころから特殊支援学級で過ごしてきたが中学の今は普通学級へ適応観察時期。
そしてもちろんクラスメートは彼を遠巻きにしていて仲間に入るなんて事は考えられない。
クラスメートたちはiPhoneやら高級なスマホを皆が持っていてポケットに入れたまま洗濯機でジーンズを洗ってしまって電話が水没で壊れても、親がすぐ代わりを買ってくれる。ランボーの携帯はもう何年も前の今では老人しか使っていないようなタイプなのでいつも忘れたか壊れているという振りをしていた。
夏休みになる前の最終日、成績は10段階の大体8をもらう事ができ、教師がハグしてくるのも拒否せず受け入れるようになった。低学年の頃は芋虫のまねをして床を這って成績表を貰いに行ったり、他人がADHDの自分に期待している姿を演じたりもした。

夏休み、母の現在の恋人Rotta(ドブネズミという意味)とあだ名をつけているリストのサマーコテージに連れて行ってもらえることになり、
何年かぶりの夏の予定にウキウキする。
友人に借りた車で東フィンランドに出発する一行。
道中食べものが何もないので久しぶりにコーラ一本とバゲットサンドイッチを買ってもらい幸福感いっぱいのランボー。

到着するとどうもリストの両親は戸惑っている様子、そしてリストの妹夫婦一家がやってきてせっかくの温かく迎えてくれている雰囲気がリンネアという娘のせいで台無しに・・・

というストーリー。もう最初の20ページぐらいは自分も落ち込みそうになりながら読みましたが、そこは10代向けに分かりやすくのめりこめるよう書いてあるのであとは一気に最後まで読めました。

ハッピーエンドで良かった、、この10、20年ぐらいは様々な発達障がいの診断が進み過ぎているような気もするのですが(もう大部分の人が何らかの発達障がいや読解障害や行動障害を抱えてるんじゃないかと。今でも度合いの軽いものを含めれば4人に1人と言われていたりしますし)、その当人の気持ちを書いたものとして本人は周りが奇異な目で見ることにこう感じるとかあきらめの気持ちだとか、心にぐさぐさ刺さりました。

ダイバーシティとか多様性だとか言って、結局受け入れない「普通の人たち」の心の狭さっていうんでしょうかね。
自分と同じような人間でなければ受け入れないというのは姿、形、規模の差こそあれ実に今もいろんなところで見かけます。
人種や文化が違うことではじき出されることは私も経験しますし、やっぱり分かり合いにくいんだなぁということもあります。
去年のシリア・イラク難民の大量流入でのフィンランド世論の急速な硬化も目を見張るものがありました。
年が明けて、シリア難民認定待ちの人たちに関するニュースが激減し(というのも、内閣の次年度以降の社会合意に関して組合連合とけんけんがくがくやっていてそっちにメディアの露出大部分が割かれていたので)少し落ち着いたと思いますが。

思春期向けなので14歳ぐらいの男子、女子のほんわかときめきや、やるせないエネルギーのぶつかり合いといった甘酸っぱい(男子側から描いたものですが)描写も30年前こんな時代があったなー、、と思わず遠く彼方を見やってしまったり。

これは女性作家の書いたもので、男子の心理描写としては結構鋭く書いていると思うので大人なんて、世間なんてと思っている男子にもとっつきやすい本だろうと思います。

長男、もうすぐ14歳なんですけど、自分から本を借りてくるタイプじゃないので勧めてみようかな、と。
夫はそんな気分が落ち込むようなソーシャルポルノ(他人がいかに苦難な状況にあるかを見て自分はまだ安心だと思い込もうとする事を言いたい模様)読むなよと言いますが。ま、本の選び方も考えようですよね。

これは二週間前ぐらいに二晩で読みましたが、その前に読み終えたのが2010年の話題作短編、後に映画化もされたものなのでそれについても近いうちに。
[PR]
by wa-connection | 2016-04-19 17:34 | books